先日、評論家の先生のお宅で、
昔の出版契約書を拝見する機会を得ました。

 出版契約書

 

 

出版契約書とは、著者と出版社との間で、本が出来上がる前に交わすもので、

・著作権と出版権の設定
・原稿の作成から流通までの責任の分担と範囲
・契約期間の取り決めと、その間、互いに守るべきこと
・著作権使用料(多くが印税方式)の取り決めと支払時期
・互いの報告義務事項

などを取り決めるもので、互いにサインして保管します。

これは商業出版の場合に交わす契約で、自費出版の場合には出版契約書ではなく、
覚え書きを交わす場合が多いようです。

(当然のことながら、自費出版は商業出版よりも著者の権限は大きくなります。)

 

さて、見せていただいたのは35年前の出版契約書で、私がこの業界に入る前のものですが、
現在わが社で使用しているものと、外見も条文の中身も、基本的にはほとんど変わらないものでした。

 

違っていたのは、現在のものは電子出版がらみの条文が加わっていることと、
印税の支払いの仕方が少し違っていることぐらいでした。

昔は刷り部数に対して印税が支払われていましたが、近年は実売部数に対して支払われることが多く、
うち一部、保証印税という形で支払うやり方が主流となっています。

(このブログでいう出版契約書とは紙書籍の契約書であって、電子出版の場合はまったく違う条文内容となります。)

 

見せていただいた出版契約書で、ひとつ驚いたのは、
欄外に手書きで、印税配分の取り決めをしていて(この本には共著者がいました)、

10万部までは◎%、20万部までは△%、30万を超えた場合は◇%と書かれてあったのです。
(◎△◇の中には具体的な数字が入っています。)

 

つまり、この本、10万部を超えることを最初から想定していたことになります。

「それで、実際は何部売れたのでしょうか?」と尋ねると、
11万部だそうです。思わず印税計算をしてしまいました(笑)。

 

35年前のことは分かりませんが、私が出版業界に入ったのが30年前。
どんな内容の本でも、大書店にドンと平積みすれば売れると言われた時代です。

企画を立てる側からすれば、「初版部数は2万で行きたいよね」
なんていうことは夢の話ではありませんでした。

ところが現在は、出してその10分の1でも完売できるかどうかという空気が漂っています。

 

部数が見込めなければ、時間と労力をじゅうぶんに注ぎ込むことはできません。

すると、まじめな内容のものよりも、読者の欲や恐怖をあおったものが多くならないとも限りません。

 

出版のあり方はこの先どうなるのか。

出版契約も、著者と出版社のみが交わすものではなく、
第三者が加わるといった新しい契約のあり方が生まれるということもあり得るのかもしれませんね。