印刷会社の営業さんが面白いものを持ってきました。

「第155回芥川賞・直木賞候補作一覧」

芥川賞・直木賞候補作一覧

↑クリックで画像が拡大します

 

印刷会社らしく本文用紙の銘柄が書かれてあります。

直木賞の『海の見える理髪店』も芥川賞の『コンビニ人間』も

同じ銘柄の書籍用紙「オペラクリームマックス」を使用。

これは偶然なのか!?

小説など読み物によく使われる、軟らかくてかさのある紙ですね。

 

気になるのは、やはり初版部数。

初版部数が確認できた9作品の候補のうち、5作品が1万部か、それ以下です。

直木賞を受賞された荻原浩さんの『海の見える理髪店』は1万部。

芥川賞の村田沙耶香さんの『コンビニ人間』は7000部。

 

荻原浩さんは若年性アルツハイマーをテーマにした映画「明日への記憶」(主演・渡辺謙)の原作者。

これまで40作以上を発表してきたベテラン作家で、ファンもそこそこいるはずなのに

大手出版社にしてこの部数なのか、と思ってしまいました。

 

村田さんもこれまでに約15作品を発表しており、新人ではありません。

(もちろん賞を取ったこれからは、何十万部といくでしょう)

 

数々のヒット作を放ってきた湊かなえさんの作品は8万部ですが、これは例外で、

衰退が言われて久しい文芸の実情を目のあたりにしたような気がしました。

 

私は雑誌記者として何人かの小説家にインタビューしたり、

小説家が書いた自己啓発本やエッセイを手がけたことはあるものの、

小説を本にしたことはありません。

 

なので、この世界に詳しくはありませんが、

新人さんの場合、初版3000部を下回ることもあり、

印税は5%くらいだと聞いたことがあります。

 

小説の場合、ひとつの作品を作り上げていく労力を思えば、

割に合わない世界です(ヒットすれば別ですが)。

 

それでも小説家ががんばれるのは、

自分の世界観をこれほど表現できるものが他にないからでしょう。

 

 

小説と言えば、今は亡き宮川俊彦先生(表現教育者)の次の言葉がよみがえります。

 

「本当の小説家は、自分の世界観や言いたいことをストレートに言葉にしないものだ。
何重もの垣をめぐらすようにして、おまえはどこまで分かったかと見ている。
そうして、さも読解できたかのように評論する人間に対して、
おまえはまだそこまでしか到達していないのかと笑っているんだよ」

 

私もまだ読んでいませんが、

今回の受賞作、そんなふうに深読みしてみるのも面白いかも知れません。