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blog | 2017.06.20

石川真理子の「凜と生きる」(3)日本女性特有の美とは?

石川真理子さんに自身の体験を通して語っていただいた本シリーズ、
第3回は、日本女性がもつ美しさについてです。

 

作家・石川真理子

武士の家系に生まれ、明治生まれの祖母から武家に伝わる薫陶を受ける。文筆活動の傍ら、武士道や婦道についての啓蒙活動をおこなっている。代表作に『女子の武士道』がある。

 

未熟なままの自分を肯定

 

子供の頃から「お前はいやらしいやつだ」とか「汚いやつだな」と、
私の中の私に言われ続けてきた私ですが、

だんだんと、「ちゃんと輝いているし、尊いものがあるじゃないか」と
自分を肯定できるようになってきたのです。

 

私は実家の菩提寺が禅宗だったせいもあるのだと思うのですが、

禅の本を読んだり、お寺さんへ行って坐禅したりすると、

スーッと入ってくるものがあります。

禅からは、さまざまなことを学んでいますね。

 

そうした中でやっと気づいたことですが、

そういうくだらない自分に、お日様も、空気も、無尽蔵に与えられて、

ここまで私を育んでくれている。

 

もちろん愛情豊かに世話してくれた母がいて、辛抱強く見守ってくれた父もいて、

そして祖母のぬくもりがありました。

それに気づいた時、ありがたくって、はらはらと涙がこぼれてきたこともありました。

 

未熟なままの私が、未熟なまま精一杯の私を肯定できた瞬間だったと思います。

 

欧米人に絶賛された日本女性、そして下田歌子

 

そういう私が、下田歌子という女子教育の先駆者に出会った。

 

おこがましいけれども、歌子先生と私には共通点がいくつかあって、

禅を学んだこともそうですが、武家の血を引くおばあ様から躾を受け、

女性としての生き方を追求していくんですね。

下田歌子女史

 

だからかもしれませんが、歌子先生が残された言葉に接したときに、

ものすごく響くものがあったのです。

すると、とんとん拍子に下田歌子のことを本にまとめるような状況が出てきた。

もうこれは、運命的な出会いだと思い、誠心誠意、取り組みました。

そうして出来上がったのが『乙女の心得』です。

 

本書は、幕末明治期にやって来た欧米人たちの日本女性への賞賛の言葉から始まります。

たとえば、

 

「(日本の)女は、下層階級の者でも、一般にしとやかで、

その動作は外国人と付き合う場合の態度でも、すこぶる優雅である」

 

といった具合です。

幕末明治初期の女性たちも素晴らしかったと思いますが、

歌子先生もそれに輪をかけた方で、

伊藤博文や山県有朋など明治の元勲から

「男であれば総理大臣の器」と言われるほどでした。

 

しかも、英国のヴィクトリア女王と謁見する際にじつに堂々たる態度で、

一目を置かれるんですね。

その後、たびたび宮殿に招かれて女王陛下と親しく会食や談話をした

と言われています。

 

国際化時代の現代に生きている私たちは、どうでしょうか?

 

自分の足で立って、堂々としていられるでしょうか?

 

 

教養に裏打ちされた美意識

 

どうして日本女性は欧米人をして魅了したのか。

そこには、教養に裏打ちされた美意識があるように思います。

 

幕末期の教育は、世界の最高水準でしたし、

庶民レベルでも女性の教養は非常に高かったといわれています。

 

そこに、美意識が加わって、内面からにじみ出るような魅力として映し出されたのではないかと思われます。

 

日本の文化・価値というのは、正しいか正しくないかではなく、

美しいか美しくないかで判断する──。

これは外交評論家の加瀬英明先生の言葉ですが、本当にそうだと思います。

 

正しいか正しくないかは立場や時代、状況によっていくらでも変わるけれど、

本質的な美は変わりようがありません。

 

四季折々の美しい自然の中で暮らしてきた日本人には、

本質的・普遍的な美に通じる感覚があって、

それを大切に磨いてきたように思います。

 

それは生活様式から礼儀作法、内面のあり方に及び、

幕末明治期に日本にやって来た外国人をして、

「欧米人の貴族が身につけているような教養や礼儀作法をなぜ日本の庶民がわきまえているのだ」

と驚かせたのです。

 

もちろん、人間として愚かな部分、女として醜い部分を持っているとの自覚があればこそ、

普遍的な美へのあこがれ、追究も果たし得なかったはずです。

 

下田歌子先生はそのあたりをじゅうぶんに踏まえて、

日本女性としてのありようを追究していかれたのだと思います。

 

日本の女子教育は武士道を基本とせよ

 

他の女子教育者と歌子先生の違いは、

歌子先生には「世界の中の日本」という視点があったということです。

 

当時の女性としては非常に珍しいことですが、

英国に約2年間も滞在して欧米の女子教育や風習を実際に見てきています。

 

ヴィクトリア女王に謁見した日本女性は、ともすれば歌子先生が初めてかも知れません。

 

その経験をふまえたうえで、日本の女子教育は武士道を基本とせよ、としているのです。

 

国際社会と言われて久しくなります。

2020年には東京五輪が開催される予定です。

そんな時代だからこそ、私は歌子先生の「武士道教育を基本とせよ」という理念の重さ、

尊さに気づいて欲しいと思うのです。

 

今でも日本女性は世界的に見ても評価が高いですね。

それはなぜなのか、日本女性の何がそんなに世界の人々を魅了するのか。

 

私たち日本女性がそれに気付き、しっかりと自覚を持つ時がきています。

 

 

新刊『乙女の心得』は、下田歌子の言葉を引用しながら、著者が現代女性に向けて、経験的、実践的に語りかけます。
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この記事の作成者:良本和惠(よしもと・かずえ)
書籍編集者。1986年人文社会系の出版社で書籍編集者としてスタート。ビジネス系出版社で書籍部門編集長、雑誌系出版社で月刊誌副編集長をへて独立。2013年夫と共に株式会社グッドブックスを立ち上げる。趣味は草花や樹木を眺めること。