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blog | 2017.09.13

重版出来!

「じゅうはん、しゅったい」??

昨年は、このタイトルのテレビドラマが人気を博したようですね。
気になりながらも、じつは1回も観ることができませんでした。
(わが家にはテレビがないのです)

この呼び方、「じゅうはん、しゅったい」だったと聞いたときには、
「どうして?」と思ってしまいました。

この業界に30年以上身を置いてきて、 もちろん何十冊と重版の手続きをおこなってきていますが、
一度もそんなふうに言ったこともないし、聞いたこともありません。
最初に入社したのは戦前からある出版社で、出版ルールを重んじる会社でしたが、そこでも聞いたことがありません。

では、なんて呼ぶのかというと、「じゅうはん、でき」でした。

調べてみると、本来は「しゅったい」なのだそうです。
ところが、業界内でそう呼ぶ風潮はずいぶん昔からない、ということです。
なので、ドラマでは、業界の現実とは違う言い方をしていたことになりますね。

ひとつ肩の荷が下りる

重版が決まったら、本を企画した者としては、 ひとつ肩の荷が下りた心地がしたものです。
というのも、本づくりには、著者をはじめ、編集スタッフ、デザイナーさんなどの外部スタッフのたいへんな労力を要します。
当然、印刷費も含め、お金がかかります。

そのあたりを考慮して、初版を売り切った時点で少しでも利益が出るように、部数と定価を設定します。
つまり、重版がかかるということは、初版を売り切るめどが立ち、採算ベースにのったということ。
みんながハッピーになったということで、ひとつ肩の荷が下りるわけです。

だから、重版が決まったときは、編集部内が「○○の本、じゅうはん、でき!!」と湧きたったものでした。

先ほど入ってきたばかりの重版(第二刷)

ロングセラーが少なくなった

ところが、この重版。昔とは様相が変わってきました。
昔は、しっかり作り込んだ良い本は、徐々に読者の支持を得ながら、何度も版を重ね、ロングで売れていったものですが、
今は、発売前から1,2カ月で勝負をかけるところが多いようです。
発売の時点ですでに3、4刷り決定ということも少なくありません。
(弊社=グッドブックスはまだ、そんなことをやったことがありません!)

で、発売1,2カ月で一気にピークに持ち込み、あとは徐々にフェードアウトしていく。
どうも、こんなパターンが多い気がします。

本づくりに足かけ3年

今回、色摩力夫先生の『日本の死活問題』が、おかげさまで重版出来となりました。
本書は、新聞広告など告知活動をしたものの、発売当初はおとなしい動きで、
徐々にブログやSNS、雑誌で紹介くださる方が出てこられ、人から人へとひろがっていき、
Amazonのランキング1位(外交、国際関係部門)となったのも、発売から3カ月後です。

重版すると、奥付に重版の発行日を記します

本書は、企画から発刊まで、著者の色摩先生とともに、あしかけ3年かけて作り上げました。

じつは、弊社が出す本は、だいたいが1年以上の制作期間をへています。
このくらいの時間と情熱をかけたのだから、ロングで動き続けてほしいと思います。

本づくりに手を抜かず、版を重ねてロングセラーを目指していく。
これがわが社の、時代の流れへのささやかな抵抗なのです。

なので、既刊本も、大事にしていきます。
いつ、注目されるか分かりませんからね!

(良本和惠)


この記事の作成者:良本和惠(よしもと・かずえ)
書籍編集者。1986年人文社会系の出版社で書籍編集者としてスタート。ビジネス系出版社で書籍部門編集長、雑誌系出版社で月刊誌副編集長をへて独立。2013年夫と共に株式会社グッドブックスを立ち上げる。趣味は草花や樹木を眺めること。