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blog | 2021.11.27

『庶民の日本史』の書評をいただきました

國語問題協議會の安田倫子先生より、『庶民の日本史』の書評をいただきましたので、
ここに掲載させていただき、感謝の意を表します。

安田先生は、昭和初期のお生まれですが、その毅然としたお姿に触れると、こちらまで背筋が伸びてくるような風格をお持ちの女性です。私も、かくありたいと思うこの頃……

本書は、お手元に届いてすぐに一気に読破され、書いてくださったとのことです。
お会いした時に、そうかがいました。ありがとうございます。

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小名木善行著『庶民の日本史』(グッドブックス刊)を読んで

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特筆すべきは、歴史の研究・考証に気象学を入れたこと。

 

既成の研究姿勢は歴史であれば、編年体、紀伝体などで編集されているのを、我々現代の読者は、疑いもせずそのまま受け入れて来たのではないか。

其処にこそ歴史解釈の問題があるのだ、と筆者は述べている。

今までに語り伝えられてきた歴史物語は、御伽噺(おとぎばなし)であっても、モデルとなった人々が実在の人物であったのか、創作の人物であったのかは関係なく、長い間、庶民に親しまれ、愛されて来た形が存在して、例えば勧善懲悪であったり、悲劇の主人公として描かれたり、多くの日本人の心情に合う形で伝えられてきた。

ところが、その物語の真実に迫って、「果たして、本当はどうなのか」と疑問を抱いたところから出発して、人間の歴史というものを、英雄豪傑中心ではなく、名も無く、しかし懸命に生きた大多数の人々の心根(こころね)と暮らしに迫ってみようと、検証のメスを入れたのが本書である。

西洋の歴史学に追随して、いわば偏見に満ちた歴史を平然と押し付けられてきた近年の日本の歴史に、一条の光を当てたのが本書である。


日本という國が、社会の仕組みが、世界に例を見ない、英雄ではなく名も無き人々がどれほど活き活きと暮らせる社会であったのか、明らかにされているのである。


それは希望や理想や、まして妄想論ではなく、幸いにして科学の進歩により、考古学の分野も日進月歩の功績があり、民族の違いを超えて世界的に遺物や遺跡に対しても、既成の概念は大きく取り払われて来た。


その現代に生きる我々は、この本を一読すれば、例えば青森の三内丸山遺跡が何故存在しているのかという疑問が瞬時にして氷塊するのである。(P31~32)7300年前の九州鹿児島沖のアカホヤの大噴火。

日本が誇る、現存する最古の歴史書『古事記』、『日本書紀』の解釈にしても、筆者は一字一句も疎かにせず、大切に受け止めている。「神語」(かむがたり)から神話へ、人々が自然と戦うのではなく、謙虚に対峙して、見えない存在にも畏敬の念を抱き、「喜び溢れて暮らして来た国」それが日本であったということを証明している。

問題点、疑問点は詳細に目次で示されている。
紙数の関係で話は飛ぶが、庶民の為の「寺子屋」が最も優れた教育の場であったこと、江戸時代の石田梅岩が確立した「石門心学」こそが後世、世界の人々が日本人の誠実さ、責任感がどこから来たのか参考にした学問の一つであったとも伝わっている。(P198聴講無料、出入り自由)(P202梅岩自身が考え世に問うた学問)など。

「はじめに」を数行読んだだけでも如何に筆者がひとつひとつの歴史の事実を丁寧に拾って行ったかがわかる。
是非本書を手に取って読んでいただきたい。

 

令和3年11月吉日(2021年11月)國語問題協議會 常任理事 安田倫子

 

 

 

この記事の作成者:良本和惠(よしもと・かずえ)
書籍編集者。1986年人文社会系の出版社で書籍編集者としてスタート。ビジネス系出版社で書籍部門編集長、雑誌系出版社で月刊誌副編集長をへて独立。2013年夫と共に株式会社グッドブックスを立ち上げる。趣味は草花や樹木を眺めること。