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blog | 2015.04.17

本は誰が書く? ゴーストライターの仕事

書店に並んでいる本はだれが書いているか

 

書店に並ぶおびただしい数の本。

すべて著者自身が書いているわけではないこと、

ご存じでしたか?

 

前回のブログと矛盾するようですが、

いまや、著者が苦労に苦労を重ねて原稿を書くということ自体が少なくなってきています。

著者の代わりにゴーストライターが執筆するという風潮が出てきたのは、

いつの頃からでしょうか。

 

私の経験からいえば、1980年代から90年代にかけて、

ビジネス書がメインの出版社に勤めていたとき、

初版1万部以上の売れ筋企画のほとんどがゴーストライターの手によるものでした。

 

ゴーストライターは具体的にどのように関わるか

 

本づくりのイメージとしては、こうです。

 

企画が通ったら、編集者は、本の構成を細かく決め、

そのジャンルに強いライターに依頼します。

著者からライターを指定されることもあります。

 

その上で、収録に入ります。

ホテルなど静かな場所で、著者に集中して話していただき、録音します。

話のうまい著者と要領を得たライターさんなら、

8時間ほどの収録+資料の読み込みで1冊を書き上げていきます。

 

著者は、出来上がった原稿に目を通し、

ニュアンスの違うところなどを修正し、原稿が完成。

このようにして出来た本が話題に上り、今週のベストセラーにランク入りし、

瞬く間に版を重ねていくことは、世の中を動かしている感じがして、

楽しいことではありましたが、著者と共に大切に温めて出来た本とは違っていました。

 

書くことは苦しいもの。ゴーストライターはそれも引き受ける

 

当然のことながら、ゴーストライターが書いた本は、

文章をあみ出す苦しみを著者の代わりにライターが引き受けるわけです。

 

ある有能なライターさんは、ときどき蒸発しました(音信不能状態になる)。

その気持ち、とってもよく分かります。

 

私もゴーストライターをやったことがありますが、

著者の呼吸みたいなものをつかむまでは、苦しみました。

 

著者になりきるまでに何時間も共に行動し、話し合い、

思考のクセを知り、息づかいを感じるまでになったら、

波が押しよせるように、すらすらと文章が出てきます。

 

「あなた、私以上に私の文章を書いているじゃない」

と、ある評論家から言われたことがありますが、

それはその方の半生を1年以上かけて聞く機会があったからでした。

 

心から伝えたいことは自分の力で書くべき

 

かつて著者とは、世に問うだけの情報や哲学を持ち、

かつ執筆能力のある方を指しました。

 

それが、いつの間にやら、合理主義と分担主義、

そして採算優先主義が出版業界にも流れ、

「著者は語る人、書くのはゴーストライター」

という状況が生まれました。

 

もちろん、日々現場で闘っておられ、書く時間はないという方々がたくさんおられます。

 

しかし私は、著者になろうという意志をお持ちの方には、

「できるだけ自分の力で思いの丈を書いていただきたい」

と、お願いします。

 

どんなに時代が変わっても、読者の心に訴えるのは、

著者の伝えたい心情が行間からにじみ出る文章です。

 

それは書く技術では補えないと思うのです。

 

( 書籍編集者 良本和惠)

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この記事の作成者:良本和惠(よしもと・かずえ)
書籍編集者。1986年人文社会系の出版社で書籍編集者としてスタート。ビジネス系出版社で書籍部門編集長、雑誌系出版社で月刊誌副編集長をへて独立。2013年夫と共に株式会社グッドブックスを立ち上げる。趣味は草花や樹木を眺めること。