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blog | 2015.03.11

【震災から4年】 東北で見た美しい森

4年前の震災時、私はある雑誌社に勤めていました。

震災が起きてすぐに、連載も休載して1冊丸ごと震災特集が組まれました。

 

編集部員が一丸となって特集に取り組んでいた頃、

私は、姑の最期をともに過ごすため休暇を取っており、

編集作業に加わることができませんでした。

 

姑が亡くなり、

いつか行こうと思っていた東北に夏の休暇を利用して行くことにしました。
震災5カ月後の東北は、鉄道も道も分断されているところが多く、

ある方のご好意で、岩手・宮城・福島の海岸縁を車で縦断していただきました。

 

「このあたりにはタバコ屋がありましてね、いつもおばあさんが座っていました。ここには……」

 

お世話をして下さった方は保険契約の仕事をしていたことがあり、

住民のことをよくご存じでした。

そう言われても、数カ月前まで多くの人が生活していたことすら想像できないほど、

何もかもなくなっていたのです。

 

このように、崩れた建物がすっかり片付けられ、

ブルドーザーが地面をならしていた地域もあれば、

船が乗り上げられたまま、家屋もそのままに放置されていた地域、

このままでは疫病が流行るのではないかと心配された地域もありました。

 

仕事ではなく、あくまでも私的な行動だったのですが、

ボランティア活動の現場で各地から集まってきた若者たちに会い、

仮設住宅では、ご家族を亡くした方のお話もうかがい、

火の海となったある町では、町長不在の中、住民同士が助け合った生々しい話を聞き、

いつしか私はICレコーダーを回していました。

 

この数日で感じたこと、考えたことは、それまでの人生の数年分にものぼるでしょう。

 

ところが、その中で最も心に残ったのは、

道を間違え、迷い込んだ山の中で見た美しい自然の姿でした。

 

海岸縁の悲惨な状況とは裏腹に、広葉樹が生き生きとした森を形成していました。

針葉樹の死んだような日本の山(手入れされずに放置されたため)が多い中、

ほんとうに久しぶりに美しい山を見たのです。

 

ここには漁業を生業とする人が多く、豊かな海の幸を得るには

川の上流の山が豊かでなければならないということを知っているのです。

 

大自然は、豊かな恵みを与えてくれる一方で、残酷な面もあります。

私たちの祖先は、それを「にぎたま」「あらたま」という言葉で表現し、

恵みの神、荒ぶる神として認識しました。

 

そして、恵みに感謝するとともに、自然の怒りにふれないために慎ましく生きたのだと思います。
私のまわりには、震災を機に人生観が変わった、生き方が変わったと

おっしゃる方が多くいます。

そこには、私たち人間も自然の一部であり、

その脅威の前には、無力である。

だからこそ、この瞬間を切に生きねばならないとの思いがあるような気がします。

 

震災後の復興は、東北だけの問題ではなく、

日本人の心の変化を伴うものであってほしい。

そう願う4年後の今日です。

(書籍編集者 良本和惠)

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この記事の作成者:良本和惠(よしもと・かずえ)
書籍編集者。1986年人文社会系の出版社で書籍編集者としてスタート。ビジネス系出版社で書籍部門編集長、雑誌系出版社で月刊誌副編集長をへて独立。2013年夫と共に株式会社グッドブックスを立ち上げる。趣味は草花や樹木を眺めること。