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移民難民 ドイツ・ヨーロッパの現実 2011-2019

社会

移民難民 ドイツ・ヨーロッパの現実 2011-2019

川口マーン惠美 著

ヨーロッパEU各国が大混乱に陥った、2015年秋。
中東や北アフリカからEUを目指す難民の列は、まるで川のようだったといいます。

ドイツには、この年89万人もの難民が押し寄せました。
あちこちで犯罪が引き起こされてもメディアは報じない。人道的支援の気持ちが徐々に恐怖に変わっていきました。

今では、警察も入りたがらないno go areaが出現し、かつてのヨーロッパは変貌しています。

なぜこんなことが起きてしまったのか。メルケル首相が、他のEU諸国の懸念を押し切って、難民受け入れ=国境開放へと舵を切ったのはなぜなのか。

ドイツ在住の著者によって、刻々と状況の変化を追うように語られた本書。
これは日本の近未来ではないかとの思いが執筆に駆り立てたといいます。

難民はやがて移民として国に定住していきます。本書は難民反対のためのものではありません。無秩序な難民受け入れがもたらした、後戻りできない衝撃の現実を、多くの日本人に知ってもらうために書かれた本です。

 

早くから警鐘を鳴らしてきたドイツ在住の著者

著者の川口マーン惠美さんは、ドイツ在住歴36年の作家です。

日本とドイツ、日本とヨーロッパの文化比較を、生活者の観点から書いた本は高い人気を呼んでいます。また、ドイツやヨーロッパの芸術、経済、政治の動向を日本に紹介する執筆を重ねてきました。

特にヨーロッパにおける移民・難民問題には注目し、日本に対して、他人事ではないと警鐘を鳴らしてきました。

本書は、その集大成というべき本です。

日本人への熱いメッセージ

日本は今年(2019年)の春、移民法ともいうべき法案を通過させ、積極的に移民を受け入れる方向へと舵を切りました。

著者は、これから圧倒的労働力不足に陥る日本にとって、移民の受け入れは必要不可欠だと言います。しかし同時に、「今こそが正念場だ」と言い切ります。

ヨーロッパには長い歴史の中で、移民がわたり、定住しています。難民はやがて定住し、移民となります。

ヨーロッパでは絶え間なく起きる難民や移民とのトラブルも、日本なら調和した受け入れが出来るのではないかと主張します。
それは、ヨーロッパの空気を吸いながら日本との比較を常にしてきた著者ならではの観点です。

「世界一安全で親切な国 日本がEUの轍を踏まないために」これからできることは何か。
多くの方々に本書を通して考えていただきたいです。

 

日本は、今こそが正念場だ。グローバリズムの荒波をどうにか乗り越えていくには、皆が状況の深刻さを理解しなければならない。難民・移民は、今後、重要なキーワードになり、日本にメリットとデメリットをもたらすだろう。デメリットのほうが勝ってしまわないよう、皆で意見を出し合わなければならない。本書がそのためのフォーラムの形成に役立つことができればと、私は淡い期待を抱いている。──本書より

川口マーン惠美

移民難民 ドイツ・ヨーロッパの現実2011-2019
世界一安全で親切な国日本がEUの轍を踏まないために
1400円+税

 

著者プロフィール

川口マーン惠美(かわぐち・まーん・えみ)
作家(ドイツ在住歴36年)。日本大学芸術学部卒業後、渡独。85年、シュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。ヨーロッパの政治・文化・経済を、生活者として鋭い感性で分析。
著書に、ベストセラーとなった『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』(講談社+α新書)、『ドイツで、日本とアジアはどう報じられているか?』(祥伝社)、『証言・フルトヴェングラーかカラヤンか』(新潮社選書)、『ヨーロッパから民主主義が消える』(PHP新書)、『そしてドイツは理想を見失った』(角川新書)、『老後の誤算 日本とドイツ』(草思社)、など多数。
2016年に『ドイツの脱原発がよくわかる本』(草思社)が第36回エネルギーフォーラム賞・普及啓発賞受賞、2018年に『復興の日本人論 誰も書かなかった福島』(弊社刊)が第38回の同賞特別賞を受賞。
ウェブマガジン『現代ビジネス』(講談社)にて「シュトゥットガルト通信」を連載中。