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社会読み物・自己啓発
さよなら、サイゴン ──あるボートピープルの自由への渇望、そして日本での37年
レー・バン・トゥ 著
1975 年4 月 サイゴン陥落。
南ベトナムの要職にあった父親が拘束され、
家族一人ひとりの未来と希望が砕かれていく……。
兄や姉たちが逞しく生る中で見えてきた、
自由のない社会、貧しさばかりの“平等”。
自由と学問への渇望から、小舟に命を託して海へ。
奇跡的に貨物船に救われ、難民キャンプを経て日本へ。
多くの人に支えられ、夢を実現した
あるボートピープルの再起の物語。
<解説>元国際赤十字ベトナム駐在代表 吹浦忠正
2026年11月19日発売 予約受付中!
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インドシナ難民として日本へ
下の写真は、著者が国連難民高等弁務官(UNHCR)から発行された身分証です。
ベトナム出身のレー・バン・トゥさんは、圧政に苦しみ、インドシナ難民として海に出ました。
1975年のベトナム戦争終結の前後、インドシナ半島のベトナム、ラオス、カンボジアは社会主義体制へと移行し、迫害を受けた人々が国外に脱出しました。その数、150万人とも言われ、海で命を落とした人々は数十万にものぼると言われています。本書は、そんな方々への鎮魂の思いを込めて執筆されました。

「宿命」を背負った家族
本書の前半は、家族それそれの人生に焦点を当てて、物語が進みます。
父──突然の逮捕。父の本当の顔が家族の運命を変えていくことに。
母──父親が拘留された十年近く、商売をしながら子供たちを育て上げる。
長男──平穏な時期に育ち、高度経済成長下の日本へ。やがて音信不通に。
長女──共産主義に染まり、教職を目指したが……。
次男──名門大学を出て公務員になるも食べていけず、社会の矛盾に悩む。
次女──11歳で学校をやめ商売の道へ。商才を発揮するも、腐敗した役人や賄賂のシステムに苦しめられる。
三男──兵役へ。過酷な訓練に耐えられず、脱走。母親の才覚で逃亡生活に終止符を打つ。
著者──あるときを境に数学の面白さに目覚めていく。名門大学に合格するも退学を余儀なくされる。
一人ひとりの人生を通して、同時のベトナム社会の矛盾が浮き彫りになっていきます。教科書に載らない、生きたベトナムの歴史が本書には詰まっています。
小舟に命を託して、国外脱出
学問への志を捨てきれなかった著者は、ボートピープルの話に乗ります。
一度目は失敗。2度目は1989年、38人を載せた小舟は運良くイギリスの商船に拾われ、シンガポールの難民キャンプへ。
そこでの生活や人々の様子は、難民自身が綴った話としてたいへん貴重なものです。
また、ここで行われたアメリカ合衆国事務所との面談、日本大使館での面談、そして国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)とのやり取りも、たいへん興味深いです。

日本での夢実現と、サポート体制
日本に着いてまず不安に追い込んだのが、日本語の壁でした。
このままでは、大学に入ることもままならない。
そんなときに手を差し伸べたのが、難民を助ける会(AAR japan)やその姉妹組織 さぽうと21の皆さんでした。
そのほか、多くの日本人のサポートによって大学に入り、
やがて、当時不可能と言われた日本語の手書き文字認識システムの実用化に成功させ、日本への貢献を果たしていきます。
本書の後半の、日本での37年の物語も、非常に興味深く、また考えさせられるものがあります。
これは、あるボートピープルの数奇な人生にとどまらず、私たち日本人に、自由のありがたさ、それを保証する国の大切さなど、
さまざまなことを問いかける良書です。
元国際赤十字ベトナム駐在代表による解説
本書に解説を寄せて下さった吹浦忠正先生は、当時、国際赤十字の駐在代表として、さまざまな支援活動をやられていた方です。
そして、日本にやって来た難民の方々への支援活動も、難民を助ける会やさぽうと21の理事としておこなっています。
そんな吹浦先生の解説は、同時のベトナムを知るうえで、当時の客観情勢や、日本政府の難民への動きを詳細に書かれていて、貴重です。

さよなら、サイゴン
─ ─あるボートピープルの自由への渇望、そして日本での37 年──
四六判並製 288ページ
ISBN 978-4-907461-54-6 C0095
定価1,980円(税込)
11 月19日発売 予約受付中!
著者略歴
レー・バン・トゥ
1963年 ベトナム・フエ市に生まれる。83年 名門ホーチミン市工科大学に入学するも、85年 父親が政治犯として連行、大学を中退。89年 一艘の小舟に身を委ね、海に出る。シンガポールの難民キャンプを経て、89年11月 インドシナ難民として来日。国立大学の工学部数理情報工学科入学。修士課程在学中、当時不可能と言われた日本語の手書き文字認識システムの実用化に成功、特許を取得。96年4月、日本に帰化。IT関連会社での勤務を経て09年に独立。
もくじ
序 章
第一章 父の秘密と母の信仰
〈父〉
警察本部職員から政治犯へ
父から教わった「世界を見るもう一つの眼」
明かされた父の正体
たった一人の「歴史の証人」として
〈母〉
父なき一家を支えつづけた母
泥棒たちへの慈悲
父の帰還と、訪れた平穏
第二章 家族の「宿命」とそれぞれの人生
〈長男〉
高経済度成長下の日本へ旅立った「坊ちゃん」
〈長女〉
時代のうねりと、共産主義への傾倒
若者たちが描いた「夢」
〈次男〉
遊びにふけった天才
ボートピープル──自由への賭け
社会主義体制下の経済崩壊(1975─85年)
貧困の中の平等
「ただ生きるだけならば……」
失意からの転機
リバースエンジニアリングの副業に勝機を見出す
戦争の残骸を「金」へと変える
3畳間から世界へ
〈次女〉
「販売ごっこ」が拓いた商人魂
密売品という名の背信
国家統制下の不条理な「平等」(1975─80年)
非情な検問と没収──知恵比べの運び屋たち(1980─85年)
腐敗の横行と出口のない閉塞感
カンボジアへの出稼ぎと子育て
〈三男〉
おしゃれな男子を襲った過酷な運命
訓練キャンプからの脱走
逃亡生活に終止符 104
第三章 ベトナムを脱出するまでの私の物語
DNAの深さ──手に負えない少年
勉強への目覚め(1972─73年)
共産主義のプロパガンダと化した教科書
名門高校の合格を取り消される
やっと手にした名門サイゴン工科大学の合格通知
青天の霹靂──公安からの「強制停学要求」
初恋の終焉
国外脱出計画(1985年秋)
監禁と釈放
ゼロからの再出発
新たな希望
浪費した修道者
「やっぱり、海外へ行って大学で学び直したい」
闇夜の出発
さよなら、サイゴン!
第四章 難民キャンプ ── ボートピープルの小さな社会
丘の上の難民キャンプ
所長からのご褒美
何でも修理屋
真夏の「審判」
日本大使館での面接
餓死寸前でやって来たボートピープル
自閉症の女の子
キャンプ内で繰り広げられた人間模様
初めての外国人友人──皆に煙たがられた副所長
キャンプの日本語クラス──忘れられない最初の日本人
第五章 日本の地で夢をつかむ
立ちはだかった日本語の壁
初めての職場、自動車部品工場
AARの相談室─―焦燥の中で手繰り寄せた一本の糸
死に物狂いで挑んだ3ヵ月間の受験勉強
年齢差のある友人たちとのキャンパスライフ
アルバイト体験その1 ベトナム料理店で認められた「生春巻き」の技術
アルバイト体験その2 ガラス工場での集中労働で得た最新PC
アルバイト体験その3 学術古書店での出会い
アルバイト体験その4 鉄工職人から「IT研究員」への大いなる転換
日本への帰化 ─ 奇跡的に満たされた条件
挫折した「飛び級」計画
0と1の世界へ、ある天才の背中
日本語の手書き文字認識の壁に挑む
2社に絞った就職活動
「中途採用取扱新卒」という内定
終 章
同じ境遇の妻との出会い
子供たちの成長と、彼らの瞳に映る日本社会
30年のキャリア──ビジネスの最前線に身を置く
システム会社の設立
60代の新たな挑戦と挫折
祖国への思い──最後の希望
〈解説〉
「あの時代」を生き抜き、日越両国に貢献しているトゥの半生 吹浦忠正 278

