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社会
オウムはなぜ消滅しないのか
中島尚志 著
世間を震撼させた地下鉄サリン事件──。
あの日からすでに二十数年。オウム真理教による一連の事件の裁判も終了し、死刑囚たちの刑が執行されました。
著者は、林泰男(死刑囚)の国選弁護人を務めた元判事。本書では、事件の立件の在り方へ疑問を呈し、事件の核心に迫れなかった検察側のミスを指摘、元幹部たちへ下された量刑の不公平さにも触れています。さらに裁判官をしながら仏教を研究してきた著者は、オウム真理教の教義の問題点に迫っていきます。
なぜオウム教団が若者たちを惹きつけたのか、なぜ殺人を正当化したのか……。
『オウムはなぜ消滅しないのか』は、昨年暮れにこの世を去った著者の遺言のような書です。
オウム事件の真相解明に後半生を賭けた著者
1997年3月半ば、夕飯を終え自宅でくつろいでいた私に、一本の電話が入った。
地下鉄サリン事件を起こし、日本国中を震撼させたオウム真理教の幹部で実行犯の一人、林泰男の国選弁護人の仕事をしてくれないか、というものだった。
私の心は揺れ動いた。
あと数年で定年を迎えるという時に地下鉄サリン事件が起き、この事件をきっかけに私は裁判官生活に別れを告げ、弁護士登録をしていたからである──。
(プロローグより抜粋)
裁判官をしながら仏教を研究してきた著者は、オウム真理教が引き起こした事件に衝撃を受け、なぜこうした事件が起きたのか真相を究明したいと職を辞していたのです。
そして、大学で宗教学を教えながら、国選弁護人として内部からこの事件にかかわることになります。
本書は、法律家にして宗教学者という異色の経歴を持つ著者が、オウム裁判の問題点を指摘し、オウム真理教が殺人に手を出した理由を究明した渾身の力作です。
公益社団法人日本図書館協会の選定図書に選ばれました。
プロフィール
中島尚志(なかじま・しょうし)
1933年東京生まれ。元判事・弁護士。東京大学経済学部を卒業ののち、同大学院印度哲学科修了。判事を経て、地下鉄サリン事件を契機に95年依願退官。96年四天王寺国際仏教大学教授。2003年退職。97年より国選弁護人として林泰男の一審・二審の弁護を宗教面から担当。著書に『空海──密教への道』『法華経──仏教における法の光景』『サリン』など。
中島尚志先生についてブログに書きました。こちらから>>>
主な内容
◉国家転覆もあり得たのに、なぜ犯行者の個別事件として立件されたのか。
◉麻原の公判に257回!なのに事件の核心に迫れなかった検察側の重大ミス。
◉死者2人で無期懲役となった林郁夫、死者0人で死刑が確定した横山真人。
◉「殺人マシーン」と言われた林泰男死刑囚の実像に迫る。
◉優秀な若者を惹きつけたオウムのこれまで指摘されなかった2つの側面。
◉殺人正当化のために麻原が利用したインド後期密教経典の誤りを鋭く衝く。
◉修行途上で自らを最終解脱者と間違えた麻原とブッダ・キリストとの対比。
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四六判上製 208ページ 定価1600円+税
ISBN978-4-907461-02-7 C0036
公益社団法人日本図書館協会 選定図書
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目次
■プロローグ 地下鉄サリン事件、二十年後の問い
■第一章 オウム教団の変貌と事件
■第二章 私の見た実行犯たちの実像
■第三章 悲しい犯行動機、林泰男の弁護を担当して
■第四章 若者を惹きつけた出家制度とヨーガの技法
■第五章 殺人を正当化する経典の存在とその誤り
■第六章 宗教とは現実である
■エピローグ オウム出現の土壌としての日本の戦後
ブログ【地下鉄サリン事件から20年】 オウム事件の「真相」はどこにあったのか