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社会
テロ等準備罪 目の前の危機にいかに立ち向かうか 国会38の論点
赤澤亮正 著
2017年に成立した「テロ等準備罪処罰法」をめぐって、「一億総監視社会になる」などといった、国民の不安を煽る論調が日本中を駆け巡りました。
法案成立の中心的役割を果たした著者は、
「テロ等準備罪の創設の要諦は、せめぎ合うテロ等組織犯罪の抑止と、プライバシー等人権の保護の最良のバランスを実現することです」
と指摘しています。
本書は、国民の不安や懸念に対しては、Q&A形式で、一つ一つ丁寧に答える形式をとり、「テロ等準備罪は国民生活を脅かす?」に丁寧に答えた本です。
本書を読めば、「テロ等準備罪」成立前の日本がいかに危険であったか、世界の標準から見て「テロ等準備罪」はかなり謙抑的(抑制的)であったことがわかるでしょう。
テロ等準備罪がなぜ必要なのか、詳しく解説
近年、テロをはじめとする凶悪な組織犯罪、国際犯罪が世界各地で頻発しています(後述)。
2020年に東京オリンピック・パラリンピックを控えた我が国では、テロの可能性は格段に高まっており、それらを未然に防ぐためには国際協力が不可欠で、そのためには、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の締結を急がなければなりませんでした。
この条約は、世界で187の国・地域が締結しており、国連加盟国(193か国)で未締結の国は、わが国を含めて以下の11か国のみでした。
TOC条約を締結するためには、条約が求めている義務(重大犯罪の実行の合意の犯罪化)を履行するための国内法の整備が不可欠です。この国内法が「テロ等準備罪」を新設する「組織的犯罪処罰法」の改正です。
テロ等準備罪で処罰の対象となるのは、どんな場合?に詳しく答える
テロ等準備罪が適用されるのは、どんな場合でしょうか?
まず、 (1)犯罪主体をテロ集団、暴力団、麻薬密売組織、人身売買組織などの組織的犯罪集団に限定し、
さらに、(2)重大犯罪(懲役・禁錮4年以上の犯罪)の計画があること、
そして、(3)犯罪の実行準備行為(犯罪計画に基づいて行う犯罪資金の調達や犯行に使う凶器・弾薬等の手配、犯行現場の下見など)が行われたこと
これら3条件のすべてに該当した場合に初めて、処罰対象となるものです。
このような条件(犯罪の成立要件)からして、組織的犯罪集団に入っていない一般の方々が、捜査や処罰の対象になることは考えられません。
図解、コラムを多用して解説した、類書なき1冊
テロ等準備罪に関わる問題を、本文はもちろん、巻頭の色刷りの資料や、図表、コラムを多用して、解説しています。
まさに類書なき一冊、一般の方々はもちろんのこと、全国29万人の警察官、自治体、企業等、危機管理者必読の書といえます。
国会審議のポイントを抽出して掲載!
法案審議では、与野党の多数の議員による質疑に対して、総理大臣、法務大臣、外務大臣等による答弁がなされました。本書では、重要な答弁を抽出して掲載しています。
<本書掲載の答弁を引き出した国会議員(五十音順、敬称略)>
赤澤亮正、東徹、有田芳生、石井苗子、井出庸生、糸数慶子、井上英孝、遠藤敬、逢坂誠二、小熊慎司、國重徹、今野智博、佐々木さやか、土屋正忠、仁比聡平、濱地雅一、浜田昌良、平口洋、福山哲郎、藤野保史、藤原崇、古川俊治、松川るい、松浪健太、真山勇一、丸山穂高、宮崎政久、山尾志桜里、山口和之、吉田宣弘、若松謙維
世界のテロ事例を満載!
本書では、近年に世界で実行されたテロ事件の概要を多数掲載しています。しかし、それら実際に起きたテロの背後には、その数倍もの、未然に阻止されたテロ計画があることを知っておかなければなりません。
〈本書で取り上げたテロ事件、地域動向〉
地下鉄サリン事件(1995年 日本)
米国同時多発テロ事件(2001年 米国)
ロンドン同時多発テロ事件(2005年 イギリス)
アンディジャン事件(2005年 ウズベキスタン)
ボストンマラソン爆弾テロ事件(2013年 米国)
パリ同時多発テロ事件(2015年 フランス)
ニースのテロ事件(2016年 フランス)
バングラデシュテロ事件(2016年 バングラデシュ)
インドネシアでのテロの動向(2002年頃からテロ頻発)
中央アジアでのテロの動向(フェルガナ盆地周辺でイスラム主義組織が活動を活発化)
東南アジアでのテロの動向(ISILがフィリピン等に支配地域を確立するのではないかという大きな懸念)
〈本書で取り上げたテロ組織〉
ETA(バスク祖国と自由 スペイン)、ETIM(東トルキスタン・イスラム運動 中国)、IMU(ウズベキスタン・イスラム運動 ウズベキスタン)、IRA(北アイルランド共和軍 イギリス)、ISIL(イスラム国 シリア等)、ISIL東アジア(フィリピン)、JI(ジェマア・イスラミア(インドネシア)、アブ・サヤフ・グループ(フィリピン)、アルカイダ(アフガニスタン等)、アル・シャバーブ(ソマリア)、イスラム解放党(中央アジア)、タリバン(アフガニスタン)、日本赤軍(日本)、ボコ・ハラム(ナイジェリア)、モロ・イスラム解放戦線(フィリピン)
本書では、38の論点と、14のコラム、4つの「刑法豆知識」などにより、「テロ等準備罪処罰法」の重要なポイントを余すところなく述べています。
テロ等準備罪
〜目の前にある危機にいかに立ち向かうか 国会38の論点〜
280ページ 定価1,500円+税
本書の構成
序 章 早わかり「テロ等準備罪」
Ⅰ 章 テロ等準備罪が生まれた国際的背景
1.国際組織犯罪防止条約(いわゆるTOC条約)
2.国際的なテロ等の組織的犯罪の実態
3.諸外国におけるテロの取締りの動向
4.日本と諸外国のTOC条約担保法制
5.国連特別報告者書簡(いわゆるカンナタチ書簡)
第 Ⅱ 章 テロ等準備罪の成立要件・効果等
第 Ⅲ 章 テロ等準備罪以外の改正内容と今後の検討課題等
資料編、索引
著者略歴
赤澤亮正(あかざわ・りょうせい)
衆議院議員。自民党総務会副会長。
1960年生まれ。84年東京大学法学部卒業後、運輸省入省。91年 米国コーネル大学経営大学院にてMBA取得。運輸省航空局監理部国際航空課補佐官、大臣官房文書課企画官、国土交通省大臣官房総務課企画官、日本郵政公社国際本部海外事業部長などを歴任。2005年衆議院選挙に鳥取2区から立候補、初当選(自由民主党)。現在5期目。国土交通大臣政務官、自民党国土交通部会長、内閣府副大臣、衆議院環境委員長を歴任。
17年国会対策副委員長としてテロ等準備罪処罰法の制定に尽力。17年10月1日現在 自民党総務会副会長、自民党国会対策委員会副委員長。防災省創設などによる新科学技術立国・国土強靭化、働き方改革・女性活躍・少子化対策、性犯罪被害者や障害者の支援などがライフワーク。