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blog | 2017.03.14
がんになって現れる女性特有の悩み ~がん治療コーディネーター藤岡典代さんに聞く(8)
子宮がんや乳がんなど婦人科系の初期のがんは、外来で治療を受けられることから、がんを抱えながら働いたり社会的な活動をされている女性たちも多くいらっしゃるようです。
しかし、がんになって現れる女性特有の悩みがあります。今回はその悩みとどう向き合うべきか、藤岡典代さんにうかがいました。
抗がん剤によって容貌に変化が現れる
──女性ががんになって最も気になるのは何でしょうか?
がん種や進行の度合いに関わらず、治療の過程においてはさまざまな症状が現れます。特に抗がん剤治療の場合、胃腸障害、脱毛、手足のしびれ、湿疹、シミなどの副作用が伴います。特に女性にとってつらいのが、脱毛、肌荒れ、シミ。
風貌が変わってしまうことは、がんの症状にも増して、精神的苦痛を伴うという女性患者さんもいます。
──典代先生ご自身はどうでしたか?
私もそうでした。抗がん剤治療を終えた1週間後から、髪の毛が抜けはじめ、顔にはびっくりするほどのシミができました。
本人が気にするほど、周囲は気にしていないということをわかってはいるものの、憂うつな気分は増すばかりで、外出さえも嫌になります。
ネットでシミが薄くなるファンデーションや脱毛予防のシャンプーを検索する毎日でした。
私が、あまりにも嘆いたせいか、シミを隠すファンデーションとか、育毛剤など沢山お見舞いにいただいて使いこなせないほどです。(笑)
藤岡典代さん
一時現れるその時を楽しむ
──容貌の変化に悩む女性たちに、典代先生はどんな言葉を掛けますか?
容貌の変化に対して、多くの方々が、ウイッグ(かつら)を付けたり、マスクをしたり、お化粧も、いつもは薄化粧だったのが厚化粧になったりします。
髪が抜けるのもシミができるのも、薬の副作用であって、治療が終われば、髪はすぐに生え始めますし、シミも消えていきます。
一時期に経験する自分の風貌に対してコンプレックスを抱くこともあるかもしれない。けれど、ウイッグを楽しむとか、帽子を楽しむとか、その時期にしかなかなか楽しめないことだと捉えて、そこは上手に、おしゃれを楽しみながら、乗り切ってほしいですね。
私の場合、最近ではケアの仕方が上手になりました。
抗がん剤治療後は、帽子、マスクをつけて直射日光を避け、シミをひどくしないように気をつけるとか、なるだけビタミンC、Bをたくさん摂るとか、いろいろ工夫しています。
人はたくましいもので、その環境に慣れると状況への適応能力が増してきます。
また、がんを治癒させるという信念を持って自分で選択した治療であれば、副作用も引き受ける覚悟と強さも必要なことです。
職場や周囲に迷惑を掛けていることがつらいと言う女性たちへ
──女性は特に他人に迷惑を掛けることをよしとせず、それがストレスになっている方も多いように思うのですが。
そう思うのは自然な感情だと思います。しかし、これも考え方なんですね。
認知行動療法に、こういうものがあります。
「自分は職場に迷惑を掛けてダメな社員だ」
「皆に迷惑を掛けて嫌われているので、辞めたほうがよい」
そうした不健全な信念が出てきたときに、それをどのように書き換えるかというと、
「自分は、周りの人々に、人助けの機会を与えている」
というふうに書き換えるのです。
人間、お互いさまで、誰しもけがをすることもあれば、病気になることだってある。親の介護や子供の看護とかで職場の人々に協力してもらわなければならないことも出てくる。
それに、人は、人助けに喜びを感じるものです。だから、お互いさまなんですね。助ける機会を与えていると考えればいいんです。そして、今は助けてもらう立場かも知れないけれど、いずれまた、助ける立場になればいいんです。
──そう思えば、楽になりますね。
人は助け合うものだと思うことです。
感謝をして助けを受けて、元気になっていこうと思うことですね。
──ありがとうございました。(聞き手・良本和惠)
藤岡典代(ふじおか・ふみよ)
薬剤師・心理カウンセラー。夫が院長を務める藤岡医院でがん治療コーディネーターとして、患者を心理面から支えてきた。医療の範疇を超えた事業活動をめざして、株式会社テトテトテを設立。料理家の本道佳子さんと共にがん患者と家族のために、病気との決別をおこなう「最期の晩餐・食事会」はメディアを通して注目を浴びる。
☆ ☆ ☆
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- この記事の作成者:良本和惠(よしもと・かずえ)
- 書籍編集者。1986年人文社会系の出版社で書籍編集者としてスタート。ビジネス系出版社で書籍部門編集長、雑誌系出版社で月刊誌副編集長をへて独立。2013年夫と共に株式会社グッドブックスを立ち上げる。趣味は草花や樹木を眺めること。