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blog | 2017.03.28

不安や動揺を静めるには ~がん治療コーディネーター藤岡典代さんに聞く(12)

がんを告知され、大きなショックを乗り越えたとしても、検査結果や体調の変化に心が動揺してしまうことは多々あるといいます。

そんなときに、どうしたらいいのか、藤岡典代さんにうかがいました。

 

人には元に戻る力がある

 

──前回のお話で、がんを告知され、大きなショックは乗り越えても、検査結果や体調の変化に心が動揺してしまうことが多々あるとおっしゃいました。そんなとき平常心を保つためのコツはありますか?

 

人間ですから、だれしも感情が揺れて当然です。ただ、一時期大きく揺れたとしても、これが自分の自然な状態だと思える元の位置に戻ってくることが大切なんですね。

がんになると、すごくハイテンションになって、治ったような気になるときもあれば、

逆に、病院で検査結果を言われて、腫瘍マーカーが上がっていたとか、

レントゲンに何かが映っていて、医者に様子を見ましょうなんて言われた日には、すごくがっかりして、もうダメだと落ち込むときもある。

 

だけど、人には元に戻る力があるのです。

サイモントン療法(がんの心理療法)でも言っている「ナチュラルシンキング」というニュートラルな考え方です。

 

治らなくても自分らしくいられるという境地になる

 

──それはどのようにできるものでしょうか?

 

希望を育み、執着を手放すことが大切です。

治るということは大きな希望なのですが、治らなくても自分は自分でいられるというくらいの気持ちになるのです。

なにがなんでも治りたいと、そこにだけ向かって行くと、やはりつらさが伴います。

だから完治はしたいのだけれど、たとえそうならなくても、ちゃんと自分らしくいられるというところに戻ってこられるのがよいのです。

 

がんが治るまで、好きなことも我慢して治療に専念するという方もいます。

はたして良い結果を招くでしょうか?

 

私は、がんを患っていても、幸福を体感することは大切だと思っています。

喜びやワクワク感は、生きる力となって治癒力を育んでいくはずですから。

 

がんになると、皆さん、治療や食べ物には一生懸命になるのですが、自分の心を整えるということをおざなりにしがちです。

でも、これはじつはいちばん大切なことだと思うのです。

藤岡典代さん

 

心静かに内省する時間を持つ

 

──そういう自分になりたいと思ったときに、サポートしてくれる場所や専門家はいますか?

 

がんサロンもいいですが、心理療法的な専門家についてカウンセリングを受けるという方法もあります。

特別そういう場に行かなくても、ご自宅で静かな時を持つことも有効です。特に瞑想はいいですね。

いま、マインドフルネスという言葉も出てきていて、グーグル社などの世界的な企業が瞑想を取り入れています。

 

いま自分はここにあると、心を落ち着かせるためには、瞑想とか、坐禅とか呼吸法が有効だと言われています。

サイモントン療法でも、イメージ療法や瞑想を大事にしています。最近では、医療瞑想というのも出てきています。

とにかく、心静かに自分に戻ること、内省する時間を持つことがとても大事だと思います。

私も毎朝、深くやっています。

 

──どんなふうにやっていらっしゃいますか?

 

家族が起きる前に、30分から1時間くらいです。

30分瞑想することもあれば、般若心経をとなえることもあります。

内省する時間とは、瞑想でも、お経をとなえるでも、写経でも、人それぞれに合うやり方がいいと思います。

 

大切なのは、呼吸です。短い時間でも良いので「息を吸っている」「息をはいている」という感覚をゆっくりと味わってみてください。

 

宗教心を持っている人は強い

 

病気やがんになると、宗教心のある方は強いと言われます。

患者さんを見て思うのは、信じるものがある人は、本当に強いです。

お釈迦様だったり、阿弥陀様だったり、観音さまだったり、あるいはキリスト様だったり、

人それぞれだと思いますが、それぞれの様式にのっとって祈り、静かに心を整えることはとてもいいと思います。

 

また、神社や仏閣に行くというのでもいいですね。もちろん、近所の公園とか、お気に入りの海岸、山とかでも良いのです。

 

自分が自分に戻れる場所を持つことは、人を強くします。

 

──身近な所に、解決の糸があるのですね。本日もありがとうございました。
(聞き手・良本和惠)

 

藤岡典代(ふじおか・ふみよ)

薬剤師・心理カウンセラー。夫が院長を務める藤岡医院でがん治療コーディネーターとして、患者を心理面から支えてきた。医療の範疇を超えた事業活動をめざして、株式会社テトテトテを設立。料理家の本道佳子さんと共にがん患者と家族のために、病気との決別をおこなう「最期の晩餐・食事会」はメディアを通して注目を浴びる。

☆  ☆  ☆

藤岡靖也+藤岡典代著『最期の晩餐~がん治癒へのターニングポイント』

詳細は、こちらから>>>

【関連書籍】

鬼塚晶子著『乳がんと里芋湿布』の詳細は、こちらから>>>

 


この記事の作成者:良本和惠(よしもと・かずえ)
書籍編集者。1986年人文社会系の出版社で書籍編集者としてスタート。ビジネス系出版社で書籍部門編集長、雑誌系出版社で月刊誌副編集長をへて独立。2013年夫と共に株式会社グッドブックスを立ち上げる。趣味は草花や樹木を眺めること。