ブログ | グッドブックスは、本の力を信じて"良い本"を作りつづけます。

blogブログ

blog | 2017.01.13

がんを告知されたら、サポートチームを作る~がん治療コーディネーター藤岡典代さんに聞く(4)

がんを告知されたあと、健康になるために何をすべきかについて心理面を中心に藤岡典代さんにうかがってきましたが、今回は、患者さんを支えるサポート態勢を作ることの大切さについてお話しいただきました。

 

キーパーソンを見つける

 

──前回は、がんの患者さんが健康になるためには、自分にとって良いものと放すものを明確にしていくというお話をうかがいました。

 

がんになって、じつはいちばん困るのが、きょうだいや親戚などのお節介なんです。身内と思っているだけに、よかれと思ってあれこれアドバイスや心配をして、それが本人にとってはつらいことが多いのです。

そのとき、防波堤になってくれる存在が必要なんです。これがキーパーソンです。

 

例えば、お姑さんが心配しすぎてあれこれ口出しをしてきて、それが重く心にのしかかるのであれば、ご主人にキーパーソンになってもらい、「少し放っておいてほしい」と伝えてもらいます。

 

私の場合、夫のきょうだいたちが、その連れ合いを含めて、みんなが心配のあまり騒ぎ立てたわけです。私は一人っ子だから、入院したら、だれが世話をするのかとか。

そこは夫が防波堤になってくれて、「本人は人に迷惑をかけたくないと気にしているので、大騒ぎされると本人が一番つらいので、そっとしておいてほしい。必要なときには言うはずだから」と伝えてくれました。

自分で対処しようとすると、これ自体がものすごいストレスになりますから、キーパーソンにお願いするのです。

キーパーソンは、配偶者でも、きょうだいでも、子供でもいいのですが、その中でいちばん頼りになる人で物が言える人がふさわしいですね。

藤岡典代さん

 

サポートチームをつくる

 

旦那さんや子供さんとか、キーパーソン一人だけに頼りすぎると、その人がダウンしてしまうということも起こりうるので、がん患者を中心としたサポートチームをつくる必要があります。

 

がんになるとどうしても人を頼らざるを得なくなります。

病院に通うときに車を運転してくれるとか、情報収集をしてくれる人とか、メンタル面サポートとか、お金の面での相談とか、さまざまな助けが必要になりますから、できるだけ多くの人から援助が得られる形でオープンにして円満に療養生活に入っていただきたいと思います。

その際、サポートしてくれる人の得意分野を見極めて、「この問題については、信頼できるあなたにお願いしたいと思っている」と相談しておけば、自分も楽になるし、相手も、役に立つと思うと、嬉しいはずです。

 

・情報収集

告知されると、そのままその病院で治療を受けるという人もいるでしょうが、乳がんだったら、もっと実績のある先生のいるA病院にしようとか、セカンドオピニオンとしていくつかの病院に行ってみようかとか、選択肢を見つける中で、最終的にこの病院で治療を受けていこうといった決断ができます。そのためには情報収集が必要です。また、治療に入っていって、副作用が出てきてつらすぎると感じたら、情報収集係にもっと調べてもらうといたことも。

今は、ネットの情報が充実していますから、パソコンを使い慣れた子供に頼むということもあるでしょうね。

 

・メンタルサポート

メンタル面でのサポートも重要で、当初は、身近にいる家族がいいのでしょうけれど、ストレスが大きくなったら、専門的知識をもったカウンセラーとか、段階に応じていろんなパターンを用意しておくのも手ですね。

 

・気軽に動いてくれる人

いざという時に病院に連れて行ってくれる人や、自宅療養中に買い物を頼める人とか、ちょっとした頼み事を気軽に引き受けてくれる人がいると気持ちがとても楽になります。家族でも良いでしょうし、親しい友人も良いでしょう。

また、金銭的サポートというのも結構大事で、治療費を工面してもらうというよりも、相談できる人です。

 

患者会に参加してみる

 

サポート態勢も整って、自分が落ち着いてものごとを考えられるようになったら、患者会に参加して新しい人間関係を構築してみるのも良いかと思います。

全国の基幹病院や総合病院といわれるところにはたいがいありますし、患者会なので、同じ病気の人と知り合いになれ、がん患者にしか分からない気持ちが共有できたりするチャンスも生まれます。

ただし、中には、医療者の悪口しか言わない場になっていたり、リーダー格の人が言う民間療法に従わないといけないような会になってしまっていたら意味がないので、自分に合わないとか、ストレスを感じると思ったら、そこから離れる決断が大事です。これも、放していくことですね。

 

──がんの患者さんは、ひとりで悩むという方がけっこう多いように思います。周りの人も、頼られることで、自分も役に立っている、一緒に病を乗り越えていこうと希望を持たれるのではないでしょうか?キーマンとサポートチームが多くの患者さんの周りにできることを期待します。

ご自身が療養中の中、インタビューにお応えいただき、心より感謝いたします。ありがとうございました。(聞き手・良本和惠)

 

藤岡典代(ふじおか・ふみよ)

薬剤師・心理カウンセラー。夫が院長を務める藤岡医院でがん治療コーディネーターとして、患者を心理面から支えてきた。医療の範疇を超えた事業活動をめざして、株式会社テトテトテを設立。料理家の本道佳子さんと共にがん患者と家族のために、病気との決別をおこなう「最期の晩餐・食事会」はメディアを通して注目を浴びる。医院の隣にカフェとお菓子の工房「しましまの木」をオープン、がん患者のみならず、地域の憩いの場として人気が高い。

☆  ☆  ☆

藤岡靖也+藤岡典代著『最期の晩餐~がん治癒へのターニングポイント』

詳細は、こちらから>>>

【関連書籍】

鬼塚晶子著『乳がんと里芋湿布』の詳細は、こちらから>>>

 

 

 

この記事の作成者:良本和惠(よしもと・かずえ)
書籍編集者。1986年人文社会系の出版社で書籍編集者としてスタート。ビジネス系出版社で書籍部門編集長、雑誌系出版社で月刊誌副編集長をへて独立。2013年夫と共に株式会社グッドブックスを立ち上げる。趣味は草花や樹木を眺めること。