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blog | 2017.03.17

乳がんや子宮がんになったあなたへ ~がん治療コーディネーター藤岡典代さんに聞く(9)

乳がんや子宮がんを告げられた女性たちは、乳房や子宮、卵巣の切除を迫られることもあり、新たな苦しみに直面すると藤岡典代さんは言います。その女性特有の悩みがどのようなものであるか、そしてどう対処すべきかをうかがいました。

 

女性の象徴がなくなる苦しみ

 

乳がん、子宮がん、卵巣がんなど、女性性にかかわるがん種の場合、女性の象徴である乳房や子宮、卵巣を切除しなければならないケースが出てきます。

また、術後、再発・転移防止に長く抗がん剤治療が必要な場合もあります。以下に述べることは、私が患者さんからお聞きしたお悩みの一例です。

 

 

「乳房を失ったら、女性ではなくなる。そんな妻を持った夫は不幸だ。」

 

「子宮を失ったら、子供を望めない。子供を産めない私は女性として失格だ。」

 

「髪の毛のない私は、醜い。もう外に出て働くことはできない。」

 

このような思い込みが彼女たちを苦しめていました。

そこで私は、カウンセリングによって、その思い込みを次のように修正していきました。

 

「乳房を失ったからと言って女性でなくなるわけではない。また、夫は私の存在そのものを愛しているのであって、乳房の有無は問題ではない。必要な時助けたり、助けられたり、夫婦として困難を乗り越えるという学びの機会を与えられている。その体験を通して互いに成長し、あらたな幸せの形を作ればよい。」

 

「子供を産めるか否かで女性の真価は問われない。また、障害の有無によって人の真価は問われない。人は、それぞれに困難はあるけれど、それを乗り越える力が備わっている。私にもその力はあり、唯一無二の私という女性として生きていくことは可能である。」

 

「私は髪の毛を失ったが、つらい治療を乗り越えた勇者だ。私の周囲は、私の治癒を願い、私を醜いなど思っている人はいない。多くのがん治療を体験した女性たちは、この困難を乗り越え、ちゃんと働いている。私にもその力は備わっている。」

藤岡典代さん

 

私がおこなったのは、認知修正といって、当人を苦しめている思い込みをはずしていくカウンセリングです。このカウンセリングによって、皆さんに笑顔が戻りました。

 

──思い込みによって苦しんでいる場合もけっこうあるということですね。

 

もちろん、すぐに思い込みが変わるわけではありません。苦しい思いが出たら、新たな信念を思い起こし、心に刻むことが大事です。

 

治療をしないという選択

 

──しかし実際に手術となった場合、できることなら、乳房や子宮を残したいと願う女性がほとんどではないでしょうか? そういう女性に典代先生はどんな言葉を掛けてこれたのでしょうか?

 

これまで私の所には、乳房を部分切除でもしたくないとか、子宮を全摘したくないなどの理由でカウンセリングを受けに来られた方が何人もいらっしゃいます。中には、風貌が変わってしまう治療は一切したくないという方もいらっしゃいました。

 

がんの宣告を受けるとたくさんの選択・決断が迫られます。

多くの方が、西洋医学(手術・抗がん剤・放射線)の範疇で治療の選択をされるのですが、統合医療的に考えれば、保険の効かない先進医療、代替医療、伝承医療などの療法があり、多種多様な選択肢があります。

実は、その手前の段階で治療そのものをするのかしないのかの選択があるのです。これは、とても大切なことで、治療内容の選択以上に重要な問題です。

 

──治療をしないという選択は、まわりを説得するのに苦労しそうです。

 

家族や友人からすると、命がかかっているのだから治療を受けるのが当然だと思われるでしょう。しかし、本人にとっては、生き方にかかわる重要な問題なのです。

 

少数派ではありますが、いっさいの治療と言われるものの選択をせず、生活をされている方もいます。

本人に言わせると、「がんになったことを見ないようにしているわけではない。自分の信念に基づいて生きているだけ。」なのだそうです。

 

治療をしない選択は、どのような治療を選択するか以上に強い信念と勇気が必要です。しかし、これが「何が何でも治療をすることは良くないことだ」というような執着であってはなりません。

状況に応じて変化しても良いという柔軟性も勇気のひとつですから。

 

──そうした選択をした患者さんに対して典代先生は、それを尊重し、寄り添ってこられたわけですね。今回も貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

藤岡典代(ふじおか・ふみよ)

薬剤師・心理カウンセラー。夫が院長を務める藤岡医院でがん治療コーディネーターとして、患者を心理面から支えてきた。医療の範疇を超えた事業活動をめざして、株式会社テトテトテを設立。料理家の本道佳子さんと共にがん患者と家族のために、病気との決別をおこなう「最期の晩餐・食事会」はメディアを通して注目を浴びる。

☆  ☆  ☆

藤岡靖也+藤岡典代著『最期の晩餐~がん治癒へのターニングポイント』

詳細は、こちらから>>>

【関連書籍】

鬼塚晶子著『乳がんと里芋湿布』の詳細は、こちらから>>>

 


この記事の作成者:良本和惠(よしもと・かずえ)
書籍編集者。1986年人文社会系の出版社で書籍編集者としてスタート。ビジネス系出版社で書籍部門編集長、雑誌系出版社で月刊誌副編集長をへて独立。2013年夫と共に株式会社グッドブックスを立ち上げる。趣味は草花や樹木を眺めること。