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blog | 2017.06.13

色摩大使に聞く(3) 北朝鮮による脅威をどう捉えるか

繰り返される北朝鮮によるミサイル発射、懸念される核兵器開発。

戦後最大の脅威とも思える北朝鮮の動きを日本はどう捉えるべきなのか、

このほど発刊された『日本の死活問題~国際法・国連・軍隊の真実』の著者で、戦時国際法の第一人者・色摩力夫先生にうかがいました。

色摩力夫(しかま・りきを) 評論家、元チリ大使。外交官として9カ国に赴任し、20年以上を海外で過ごす。戦時国際法の第一人者。著書に『新戦争論(小室直樹氏との共著)』『国家権力の解剖』『国民のための戦争と平和の法(小室直樹氏との共著)』『国際連合という神話』など多数。

 

戦争前の典型的な事態

 

──今年に入って北朝鮮が弾道ミサイルを何度も日本海方面に発射するなど、日本にとっては由々しき事態が続いています。色摩先生はこれをどう捉えておられますか?

 

北朝鮮は弾道ミサイルの発射を繰り返していますが、核兵器開発も行っています。

つまり、2つの危機があるわけで、いつ何時、事が起きるかもしれない。 これは戦争に至る典型的な事態であり、日本はそういう危機の中にあると言えます。

 

──国会論議などみると、そのような危機感を持っている政治家は少ない印象を受けます。こうした事態が起きたとき、普通はどんな対応を取るものなんでしょうか?

 

まずは、外交交渉によって戦争の危機を回避しようと努力するわけです。そして、こじれにこじれてどうにもならなくなったときに実力行使すなわち戦争という手段が出てくる。これが近代国際社会のひとつのルールです。

 

スペインの哲学者オルテガが、次のように言いました。

「戦争とは、国際紛争解決のための最終手段である」と。

 

──戦争はあくまでも最終手段であるわけですね。

 

そうです。文明社会において実力行使は最終手段でなければなりません。いきなり実力行使というのは野蛮な証であるわけです。

 

国連の非難決議はじつは無力

 

──しかし、日本は北朝鮮と国交がありません。これまで日本政府は、北朝鮮が弾道ミサイルを発射したり、核開発疑惑が高まるたびに、国際社会を味方につけて非難決議を上げるよう国連に働きかけてきました。

 

国連で非難決議を上げるのはいいでしょう。

しかし、それで問題が解決すると思っていたら、とんだ間違いを犯すことになります。

これまでも北朝鮮の核開発やミサイル発射を受けて、国連安保理で非難決議をしていますが、北朝鮮は耳を貸してきませんでした。

第一、非難決議には何の拘束力もありませんし、経済制裁を呼びかけたとしても、経済援助をする国があったわけです。

 

反撃はできるが攻撃できない自衛隊

 

──北朝鮮は、「日本の在米軍基地を狙う」とか、「日本を火の海にする」と脅しています。これが単なる脅しではなくて、現実的な行動になったときに自衛隊がまともな抵抗ができるのか、これも心配です。

 

残念ながら、法律上、自衛隊はまともに対応できません。

安保法制論議のときに気づいた方もおられると思いますが、自衛隊は行政機関にすぎませんから、法律に明示的に書いてあること以外はやってはいけないという縛りの中にあるのです。

 

まず、明らかに日本の国民に弾道ミサイルや核が向けられていたとしても、自衛隊は何もできません。

そして実際に攻撃を仕掛けられたときに反撃はできるが、こちらから攻撃することはできない。自衛隊が攻撃すると、法律違反となります。

 

──例えば、敵が日本本土に上陸してくるなど日本に対する侵略行為があったとき、それでも交戦することはできないのでしょうか? 現実的に想像すると、とても恐ろしくなります。

 

国際紛争の現場では想定できないことが起きます。しかし日本の場合、戦争をまったく想定していませんから、法律で自衛隊を縛っているわけです。

 

そのひとつが、皆さんがご存じのように、憲法が交戦権を否認していること。

 

そしてもうひとつ、自衛隊が警察的な行政機関の一員に位置づけられているからです。

軍隊が行政の一機関となっている例は、世界で類例のないものです。

 

──法律違反を犯さなければ自国民を守れないような法律体系になっているというわけですね。

 

国際法上、自衛権は、個人の正当防衛の権利と同様、自明の権利として認めています。

ところが、憲法9条、正確に言えば、その第2項の交戦権の否認は、主権の根幹部分を自ら放棄するとうたってあります。

これは、日本が米国の従属国家であったとき、つまり米軍の占領下にあったときには、それで良かったのでしょう。

しかし、今や現実に北朝鮮の問題、中国の海洋進出の動きをみると、これは何とかしないと、日本人および日本国家の死活に関わるということになりかねません。

 

──憲法9条の改正問題がにわかに浮上してきましたが、私たち国民はその内容をしっかりと理解して、将来のためにも正しい選択をする努力をしていかないといけませんね。
本日は、ありがとうございました。(聞き手・ 良本和惠)

 

色摩力夫先生の新刊『日本の死活問題~国際法・国連・軍隊の真実』には、日本の周辺危機と国際法の問題が書かれています。
また、憲法9条と日本の自衛隊の問題も分かりやすく解説しています。

死活問題

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この記事の作成者:良本和惠(よしもと・かずえ)
書籍編集者。1986年人文社会系の出版社で書籍編集者としてスタート。ビジネス系出版社で書籍部門編集長、雑誌系出版社で月刊誌副編集長をへて独立。2013年夫と共に株式会社グッドブックスを立ち上げる。趣味は草花や樹木を眺めること。