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blog | 2021.05.17

永遠の循環を担う電気炉製鋼の世界②

世界一を支える“現場力”

北越メタル株式会社 代表取締役社長 棚橋 章(たなはし・あきら)


山崎エリナ撮影写真集『鉄に生きる サスティナブルメタル電気炉製鋼の世界』の撮影現場を提供、写真解説を執筆されるなど、多大なご協力いただいた北越メタル株式会社の棚橋章社長に、鉄スクラップを再生する電気炉製鋼の魅力や世界に誇る技術力について2回にわたって聞く──。

 

日本の鉄鋼技術が世界一なのは、なぜか

 

──日本の鉄鋼技術は世界一と聞きました。

高度成長期からずっと世界一をキープしています。どんどん新しい設備を取り入れている中国に技術力がついていけば、いずれは抜かれるかもしれませんが、今の日本は古い設備でありながらも経験と技術で世界一を保っています。

いかに少ない電気で鉄を溶かせるかといった効率的な溶解技術もそうですし、不純物の濃度を短い時間で一定以下に下げる製錬技術もそうです。アークを飛ばしたりする周辺技術も進んでいて、海外からも評価されています。

お釜

 

──世界一の要因は何だと思われますか?


現場の努力、技術員との協力だと思います。アメリカなどでは、作業者は自分のやることが決まっていて、余分なことに手を出せない。相手の仕事をカバーしようとすると、相手の仕事を取ることになるという発想です。その点、日本はチームで動こうとしますから、人数以上の力が出るのです。これは日本の誇るべき点ですね。

 

写真集のシーンに見る技術

 

──ここからは、写真集収録の山崎エリナさんの作品を見ながら、現場のご苦労などをうかがいたいと思います。現場のご苦労と言えば、どんなことがありますか?

今の鉄鋼マンには相当のプレッシャーがかかってきています。

ひとつは時間的なプレッシャーです。

かつては鉄が溶けている間にお茶でものんで、ゆっくり待つことができたのですが、今は、連続鋳造と言って、鉄スクラップを電気炉に投入してから鉄を溶かし、酸化スラグの除去、今度は還元スラグを作り直して成分調整と不純物除去、温度調整という一連の作業を一定時間に行わなければならないため、オペレーターにはかなりのプレッシャーがかかるわけです。


というのも、このあと、仕上がった溶鋼を連続で送り出さないと途切れてしまう。固めるプロセスは連続鋳造ということで、出鋼して、取鍋を交換して、タンディッシュという皿の中の溶鋼がなくなる前に新しい溶鋼を次ぎ足して、どんどん連続的に鋳造していく。


オペレーターN


──鋳造は一日で何回転ぐらいするのですか?

ウィークディは昼間の電気代が高いので、夜間電力でおこなうのですが、夜間で10ヒート。10チャージです。休みの日は、1時間で1サイクルですから、22~24チャージくらい作ります。この間、鋳造を途切れることなく行わなければならないのです。

 

◆1600度の溶鋼からサンプルを取り出すシーン

サンプル取りN


できるだけ短時間で電気を使わずに安定した成分のものを出すことがオペレーターの役割。電気炉から長い柄のひしゃくですくって、成分を確認する型に流し込んで、分析します。入っている成分によって波長が変わるので、経験的に分かるわけです。

 

◆クレーンマンの役割

1600度もの溶鋼の入った器(取鍋)は溶鋼や中のレンガを含めて、約130トン。溶鋼をこぼさないでクレーンで正確に運ぶために、クレーンマンはなくてはならない存在です。下にいるオペレーターと連携しながらうまく運びます。下の写真は、残ったスラグ(不純物)を取り出しているところです。

連係プレー

 

 

◆圧延工程の調整シーン

圧延技術者N


製鋼過程で出来たビレット(一辺約30センチの塊)がそのまま使えるかというと、鉄の結晶が大きすぎて、使えません。それを圧延によって鍛錬して鉄の組織が微細な物になり、粘りや強度が出るようになるんです。

ビレットを1200度まで再加熱し、ローラーのあいだを通すことによって、鋼材が飴のように縦方向に延びる。そして次のロールに行くと、さらに細くなるというふうにだんだんと細くなっていく。これを連続圧延といいます。そうして、同じ形のビレットからいろんな形の鋼材が出来る。これがわれわれの技術の醍醐味、難しさであり、面白さです。

 

鉄の未来、循環社会へ向けて

 

──将来鉄に変わる素材できると思われますか?


自動車や電車の車両の素材などは、鉄の比率を下げたり、鉄を可能な限り薄くする方向で技術開発が進められています。窓枠のサッシは、すでにスチールからアルミに替わっています。
しかし、ビルや構造物を支える素材としては、これからも鉄が使われるはずです。将来、強度的に優れた素材ができても、製造コストは鉄にはかなわないでしょう。

 

われわれが進むべき道は、一つは、さらに品質の良い、高い強度のものを作って、付加価値を付けて進むという方向。もう一つは、鋼材を顧客が使いやすい形に加工して出荷するという方向だろうと思いますね。

 

──鉄鋼業と言えば、二酸化炭素の排出量が多いという印象がありますが。

二酸化炭素の排出量は、産業部門が全体の35%で、うち4割も鉄鋼業が占めています。ただ、電気炉は高炉に比べて4分の1と二酸化炭素の発生量は抑えられる。

もうひとつは、鉄スクラップのリサイクル。環境に優しい循環型社会に貢献しているわけです。ただし、電気炉で1トン鉄を作るのに一般家庭の1ヶ月分の電気を使いますから、莫大なエネルギーを使っていることは事実です。したがって我々は、ますます省エネと二酸化炭素を排出しづらい燃料や原料を使うなどして努力していかねばならないと思っています。


──最後に、御社(北越メタル株式会社)の展望をお聞かせください。

これからは、地域発展に貢献する企業でありたいと思っています。そのひとつとして、三大花火の一つ、長岡花火大会のスポンサーにもなり、地元のサッカーのレディースチームのスポンサーになりました。

こうしたことを通じて、地域の皆さんに喜ばれ、地域の子供達が働きたくなるような会社にしたいし、親御さんがあの会社なら心配ないと言っていただけるようになりたい。

人づくりにも力を入れたいと思っていまして、特に技術系の大学と連携して研究したり、インターンシップを受け入れたり、を考えています。

工場から臨む風景N

工場から信濃川を臨む

──ありがとうございました

鉄に生きる書影帯あり

山崎エリナ撮影『鉄に生きる サスティナブルメタル電気炉製鋼の世界』
定価 2420円(本体2200円+税)

書店、ネット書店、オンラインショップで販売中。
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詳しい内容は、こちらから>>>

北越メタル株式会社のHPは、こちらから>>>

※令和3年(2021年)5月1日から5月31日まで、新潟県の14駅にて、本写真集の電子広告が流れています。

永遠の循環を担う電気炉製鋼の世界①の記事は、こちらから>>>

 


この記事の作成者:良本和惠(よしもと・かずえ)
書籍編集者。1986年人文社会系の出版社で書籍編集者としてスタート。ビジネス系出版社で書籍部門編集長、雑誌系出版社で月刊誌副編集長をへて独立。2013年夫と共に株式会社グッドブックスを立ち上げる。趣味は草花や樹木を眺めること。