ブログ | グッドブックスは、本の力を信じて"良い本"を作りつづけます。

blogブログ

blog | 2017.03.07

がんになったら食事とどう向き合うか ~がん治療コーディネーター藤岡典代さんに聞く(6)

がんになると、皆さん心配されるのが食事の問題です。

前回は、特に気になる肉や甘い物についてうかがいました。今回は、がんと食との関係性について、がん治療コーディネーターで、自らがんの療養生活を送られている藤岡典代さんにうかがいました。

食べ物との関係性とは?

 
──典代先生は、前回のインタビューで、がんになると食との関係性をどう築くかが大事とおっしゃいました。

 

はい。がんになると特に大切なのが関係性だと申し上げました。

がんになると、薬だったり、治療だったり、人だったり。自分が対象との関係性をどう取るかがとても大切になります。食べ物との関係性はそれと同じくらい、いやそれ以上に大事です。

 

──といいますと、食との関係をどう築くかによって、病状や予後が違ってくるということですね。

 

おっしゃるとおりです。

同じお肉のお料理をいただくとき、「これは体に悪いな、ほんとうは食べちゃいけないんだけど」と思って食べるのと、「これは私の血や肉となって私の健康を助けてくれるものだ」と思って喜んでいただくのでは、体への影響も違ってきます。

 

甘い物を食べるときでも、「体に良くないな」と思って食べるのではなく、「おいしい、幸せだ」と思って食べる。感謝して喜んでいただくことです。

 

──そうした気持ちの切り替えは、すぐにできるものなんでしょうか。

 

確かに練習が必要かもしれませんね。でも、意識して行うことで違ってくると思いますよ。

 


藤岡典代さん

 

食べる瞑想

 

私事になりますが、昨年の暮れから正月にかけて、タイのお寺プラムビレッジに行きました。そこに「食べる瞑想」という修行がありました。

 

──食べる瞑想とは、食べながら瞑想する?

 

いいえ、食べることそのものに集中する瞑想です。

食事の間は周りの誰とも会話をせずに、一口入れると、お箸を下に置いて、ゆっくり噛んで味わって食べる。それを飲み込んだら、また箸を取って口に入れ、味わう。その繰り返しです。

これはがんの患者さんにとっても非常に有効な瞑想だと思いましたね。

常日頃の食のあり方を振り返って、食そのものに集中して、しっかり味わって食べているかというと、そうでない場合が多いと思うのです。

 

──典代先生自身、食の瞑想をおこなってどうでしたか?

 

ここではすべて菜食だったのですが、何度も何度も噛んで味わうと、最初は苦いと感じたお野菜が甘く感じられてきたり、口の中で味が変化するんです。それはひとつの発見でしたね。

 

腹六分目でも満足感が出てくる食べ方

 

一説によれば、本当に体に良いのは腹八分目ではなくて、腹六分目だと聞きます。

食べ過ぎないということです。

私たちの体は消化にものすごいエネルギーを使っているそうです。特にがんの患者さんのように体力が落ちているときは、治癒のほうにエネルギーを回したいので、消化のために使うエネルギーは極力抑えたい。それには腹六分目を意識したいですよね。

 

腹六分目なんて無理と思われるかも知れませんが、私自身、食べる瞑想を習ってからは、極力ゆっくりと食べているのですが、良く噛んでゆっくり食べると、少量で満足してしまうんです。

 

食べるものを健康的に自分の体に取り入れるためには、ゆっくりと味わっていただく。そして、感謝して喜びをもっていただく。食べ物とこうした関係性を保つと、食事にかんする不信感も払拭されていきますね。

 

食事への愛情のかけ方

 

──食にかんして典代先生は深い思いを抱いてこられてきたと思うのですが、がんを告知されてからは、食への思いに変化はありましたか?

 

しましまの木(藤岡典代さんがオーナーを務めるカフェレストラン)では、シェフが酵素玄米とおいしい野菜料理を作ってくれていましたし、いつでも最高のものをいただく機会があったのですが、私の食生活が完璧ではなかったのです。

 

とくに熊本地震の後は、めまぐるしく動き回っていたので、ついつい食事をおざなりにしていた。急いで駆け込んで食べたり、食べる時間が取れないこともありましたしね。

ところが病気になってからは、一食一食をとても大事にするようになりました。

ジュースひとつとっても、なるべく自分で作ろうと思い、果物をしぼって作ったり、お茶なども、きちんと煎じて飲むとか、ひとつひとつの食に愛情をかける。

 

食後のデザートもいただくのですが、ちょっと工夫して市販のヨーグルトに自分で作ったシャーベットを混ぜて食べるなどしています。

時間ができた分、食事への時間と愛情のかけ方は変わってきたと思います。

 

──何を食べるべきか食べたらいけないかと考えるのではなくて、向き合い方が変わったわけですね。

 

食べ物と良い関係性を作って体に入れてあげることが大切だと思いますね。

 

──ありがとうございました。(聞き手・良本和惠)

藤岡典代(ふじおか・ふみよ)

薬剤師・心理カウンセラー。夫が院長を務める藤岡医院でがん治療コーディネーターとして、患者を心理面から支えてきた。医療の範疇を超えた事業活動をめざして、株式会社テトテトテを設立。料理家の本道佳子さんと共にがん患者と家族のために、病気との決別をおこなう「最期の晩餐・食事会」はメディアを通して注目を浴びる。医院の隣にカフェとお菓子の工房「しましまの木」をオープン、がん患者のみならず、地域の憩いの場として人気が高い。

☆  ☆  ☆

藤岡靖也+藤岡典代著『最期の晩餐~がん治癒へのターニングポイント』

詳細は、こちらから>>>

【関連書籍】

甘い物大好きだった著者が乳がんとなり、自分の治癒力を引き出す自然療法と食事コントロールの体験を写真付きで詳しく描いた本

鬼塚晶子著『乳がんと里芋湿布』の詳細は、こちらから>>>

 


この記事の作成者:良本和惠(よしもと・かずえ)
書籍編集者。1986年人文社会系の出版社で書籍編集者としてスタート。ビジネス系出版社で書籍部門編集長、雑誌系出版社で月刊誌副編集長をへて独立。2013年夫と共に株式会社グッドブックスを立ち上げる。趣味は草花や樹木を眺めること。